覗き女
- 2017.02.04 Saturday
- 05:30
昼夜を問わず、そして場所も問わず、突如として背筋がぞわぞわする時がある。
ここ数年はそんなこともなく過ごしていた。
先ほど4時頃、なぜか眠くならないので漫画でも読もうと思い、
屋上にあるプレハブ部屋に上がった。
当然ながら室内は外気温度と同じで強烈に寒い。
ここは俺の蔵書が何千冊と置かれている部屋。
本棚の漫画はほとんどが読み直している作品なので、
衣装ケースに収納している漫画を漁る事にした。
20ケースほど置いてある中の、一番上右側の衣装ケースのふたを開けた。
漫画は15冊前後単位で不透明のファスナー付き管理用袋に収まっている。
作品名は小さな小窓から確認できる。
3段目まで探りを入れたとき、急に背筋に悪寒が走ったのだ。
指が触れているその袋を取り出すと、恐怖体験談を集めた文庫本の数々だった。
読んでないものがほとんどだと思うので取り出した。
部屋へ持ち帰り、中から1冊取り出した。
「超」怖い話 安藤君平著。
カバーを外し、風呂場へ持ち込んだ。
俺はぬる目のお湯につかりながら小説を読む。
大体30分位。
面白ければ寝床に持ち帰り続きを読む。
まあまあだとしたら脱衣所に置いておき、風呂の時だけで少しずつ読む。
そして寝床では漫画を読みながら眠くなったら寝るのである。
湯船に浸かり、早速読み始めた。
数話読み進めていくと、「覗き女」という話があった。
これは過去に俺が体験したものに限りなく近い話だった。
内容は、どこにでもある「すき間」から何者かが覗く気配を感じたり、
実際に目や人影やらを見てしまう体験談。
俺は過去の日記でも書いたと思うが、
空家のアパートのカーテンのすき間に「目」を見たり、
江古田斎場近くの道路で幽霊と目が合ったり、
大塚の古いパン屋の後に借りた倉庫内に人影を見たなどを体験している。
当時の体験を思い出し、悪寒が走ったと同時に異変が始まった。
俺の家の風呂の蓋はキャタピラみたいな構造のヤツ。
入る時は左にコロコロと巻いて、出るときは右にころがし戻すヤツ。
悪寒と同時に左いっぱいに巻いた蓋が何者かに押されたかのように、
急にガラガラと音を立てて眼前に戻ってきたのだ。
その数秒後にかなり近い距離から老女のうめき声が聞こえた。
開閉できない埋め込み式の大きなガラス面内側の水滴が一部だけ流れ出し、
それが人の形を形成した。
そこで2度目のはっきりとしたうめき声。
それは確実に声の主が風呂場にいると断定できる至近距離からだった。
早々に風呂からあがり日記を書いている次第。