カブトムシ危篤
- 2011.10.24 Monday
- 05:19
経験上、この状態からでは3日ともたない。
外出していた昨日からだったら今夜がヤマだろう。
飼育歴45年で11月までオスが生きていたことは一度も無い。
メスは11月中旬まで生きた記録が残っているが。
大体、天然物は満足に毎日樹液を吸える環境にいることは少ない。
このガブトムシは高級ゼリーを3袋(約90個)使った。
外敵もなく、毎日たらふく食事ができたので幸せ者と言える。
お疲れさん。
シンボリルドルフが30歳で逝った。
人間にしたら100歳と同等であるので大往生である。
シンボリルドルフには忘れることの出来ない思い出がある。
1984年12月23日有馬記念。
前走のジャパンカップで初の4着となったため人気が割れた。
ルドルフ、ミスターシービー、カツラギエースの三つ巴。
22才でお金がなかった俺だが勝負したかった。
普段は競馬はほとんどやらず、やっても数千円の俺だが
そのレースは妙な自信というか、確信があった。
引退のカツラギエース(3番人気)が逃げて、
3,4番手追走のルドルフが好位から差す。
直線に向いて後方からシービー伸びるも届かず。
何度シミュレーションしてもこの展開しかなかった。
ルドルフ、カツラギエースの枠連4-7 5.5倍
来れば当然、投下資金が5.5倍になるのだ。
自分の手持ち金は4万少々。
勝負軍資金としては、あまりに悲しい金額だった。
職場の小林主任に相談し、職場の積立金5万円を拝借した。
最初は「必ず来る」と、投資を勧めた訳だが、
危険すぎると断られ、主任の判断で俺個人へ貸し出す形となった。
10名ほどの女所帯の職場で毎月500円づつ貯めて、
レクリエーションなどにあてる大切なお金だった。
それでもってやっと軍資金は10万弱になった。
あまりに俺が騒ぐので主任は個人的に1万円乗った。
他の女社員も全員千円から三千円位乗った。
なぜなら俺が勝ちを保証したからだ。
負けたら弁償すると宣言したのだ。
今思えば狂っている。
でもそれだけ自信があったのだ。
みんなに儲けてほしかったのだ。
かき集めた約13万を握り締めて、
昼休みに新宿の場外へすっ飛んでいった。
恐ろしく混んでいた。
長蛇の列だった。
1時間かかってやっと買った。
シンボリルドルフ、カツラギエースの枠連4-7を13万全額購入した。
10万近い馬券は俺個人の馬券だ。
3時の休憩で食堂へ行った。
他の階の競馬好きの社員がテレビ前を陣取っていた。
ひとりの先輩社員に言われた。
「お前、競馬やるんだっけ」
「たまにやりますよ」
「何買ったの」
「ルドルフです」
「つまんねーな」
ゲートが開いた。
レースは俺の予想通りの展開だった。
審議も無く結果が出る。
枠連も550円(5.5倍)で確定。
13万×5.5倍=71.5万円
奇跡でも何でもない当たり前の結果だった。
わかっていて10万しか買えなかった事を悔やんだくらいだ。
必然的に渋い顔になっていたと思う。
「ルドルフか、つまんねーな」と言った上司が声をかけてきた。
「取ったろ、ちょぼ勝ちか」
俺は静かに答えた。
「金が無くてちょぼ勝ちです」
「60万しか勝てませんでした」